スリランカブログ

ガイドブックの次に読むべき、おすすめのスリランカ本3冊

こんにちは、ジャスミンツアーズ松本です。2023年は多くのお客様をスリランカにご案内しました。2024年はさらに多くのお客様の旅行のお手伝いができることを楽しみにしています。

今回は書籍の紹介です。スリランカのガイドブックは数種類出ていますが、スリランカをより深く知りたいという方におすすめの本を3冊ご紹介します。定期的にAmazonで「スリランカ」と検索してはせっせと関連本を購入している松本が、旅行前に読めるくらいの軽さのものを選んでみました。

1.『スリランカを知るための58章』(明石書店)

エリア・スタディーズシリーズはどの国/地域でもその国を理解する心強い本です。一時期、私は海外旅行に行く前にその国のエリアスタディーズを買って読んでいました。

スリランカ版も秀逸です。スリランカの歴史概括からはじまり、民族・言語・宗教の多様性にふれたあと、教育・経済・服飾など、非常に幅広いトピックが簡潔な文章でつづられています。各地域の簡易的な観光ガイドとして使える章もあります。執筆陣はスリランカの研究者が中心で情報の信頼性も高く、ガイドブックよりももう一段深く知りたいという人にはうってつけの本です。

ただし、2013年と出版の年数が古く、改訂が強く望まれます。当時の時世を反映した本書の大きなトピックは2つ、内戦からの復興とスマトラ沖地震による津波被害です。今改めて読み返すと、内戦や自然災害でいたんだ国が、これから成長に向かっていくんだという希望も感じられます。
その後、2019年の同時多発テロ、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック、2022年の経済危機と怒涛のイベントを迎えるとは皮肉なものです。

なお、本書には直接は携わっていらっしゃらないようですが、日本におけるスリランカ経済研究の第一人者である新井悦代先生は、お隣のモルディブのエリアスタディーズシリーズ「モルディブを知るための35章」を編・執筆されています。こちらは2021年12月刊行とコロナからの回復も見据えて書かれており、スリランカとの比較も含めて興味深い本です。ただモルディブという小さな国でコンテンツを集めるのに相当苦労したのだろうなと感じる箇所もあります。

2.『ブッダと歩く神秘の国スリランカ』(キノブックス)

にしゃんた氏の著作です。 ガイドブックを読んで、もう少しスリランカの文化や生活を知りたいな、と思ったらおすすめの本。

ここ数年の日本語でのスリランカ関連書籍は、スリランカカレーのレシピ本やアーユルヴェーダ紹介本が多く、スリランカの地元の人たちの生活を想起させるものは少ないですが、本書はスリランカで生まれ育った人の視点で書かれています。ジャスミンツアーズのサービスコンセプトである「スリランカの友人が案内してくれるような旅」にも素晴らしく合致している本です。

ブッダとスリランカにまつわるエピソードを散りばめながら、スリランカの仏教史跡をたくさんの写真と共に幅広く紹介しています。写真のトーンが全体的に明るく、とてもさわやかなです。
ひとつ補足しておかなければならない大事な点は、この本はスリランカの仏教徒の目線で書かれていることです。スリランカでは仏教がマジョリティ(およそ7割)ではありますが、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教も信仰されています。この本では仏教徒以外の目線が省略されていることを理解されておいた方が良いです。

私もこれを読んで、北の果てのナーガディーパ島や、コロンボ近郊のケラニア寺院に行きましたし、アヌラーダプラに行った後には、どの巨大パゴダが何という名前で、どの時代につくられたものかを整理するのに役立ちました。 著者の純粋にスリランカへの優しさに満ちており、読後感含めておすすめです。

3. 『ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて。』(合同出版)

スリランカの紅茶農園の労働者とその社会課題にスポットをあてた本です。 著者は宇都宮大学の栗原教授で、教え子の方たちもスリランカの茶園の現状を伝えるべく、活動されています。

茶園の労働者はもともと、イギリス統治時代に半ば強制的にインドから連れて来られた人たちであること。
それから150年間、彼らの子孫は外部と遮断され、現在も当時と同じような生活をしていること。
体力的にきつい仕事であるけれど賃金は非常に安く、日給制であるため体調が悪くても働かざるを得ないこと。
労働者たちは、自分の子どもには茶園で働いてほしくないと思っていること。

それでありながら、茶園の半数は赤字と言われていること。
これには2つの要因があるようで、ほぼ全て人力に頼る紅茶づくりのコストが現代においてはかかりすぎること。
生産された茶葉の大多数がコロンボのティーオークションにかけられて輸出されるため、先進国の紅茶市場価格が茶園の売上に大きな影響を与えること、と書かれています。
紅茶市場全体でみると、茶園自体も非常に弱い立場に置かれています。

「プランテーションを維持したいのはだれ?」 という問いが、鋭く刺さります。

茶園では高等教育機関への進学率も都会に比べてかなり低いのですが、大学に進学した人も紹介されています。茶園の出身でありながらインドの大学に留学し、現在は故郷で大学教授として活躍されている方が、「教育は、わたしの関心を外の世界に向けさせたもっとも大きな要素です」と、メッセージを寄せています。

さらっと読みやすい文体ですが、書かれている内容はピリピリと心に残りつづけます。 読むとスリランカを違った側面でみられるようになります。スリランカ好きの方、お茶好きの方にもぜひ、読んでいただきたい本です。

以上が読みやすい本です。もし、上記では物足りない、歴史が大好き、またはスリランカに行った後、あるいは2回目に行く前だったら、マニアックですがこちらをおすすめします。

おまけ『世界の教科書シリーズ スリランカの歴史ースリランカ中学歴史教科書』(明石書店)

スリランカの第6学年(中学1年生)から第9学年(中学4年生)の国指定歴史教科書4冊を日本語訳したものです。

スリランカの歴史を中心に、世界の古代文明やルネサンスなどにも触れられています。(インドを除き、日本はおろか中国や東南アジアにはほぼ触れられていません。この教科書が作られた時代背景が反映されているようです)

日本の歴史との共通点として、島国ならではの歴史の整理しやすさ(年表の書きやすさ)を感じます。
他方、大陸、つまりインドとの関係はやや異なるようです。たびたびスリランカはインドからの侵攻を受けていますが、インドに立つ複数の王朝の力関係を見ながら、したたかに外交を行っていたようです。イギリスからのインドの独立にもかなりのページがさかれており、スリランカ独立のお手本になったことがわかります。

古代の王時代は、寓話も交え、教訓や道徳も学べるようになっています。
政治史のみではなく、技術や文化にも触れられ、長らく乾燥地帯に王都が置かれたスリランカで、いかに貯水池の建設が重要であったかが説明されています。(スリランカには人造湖がとても多いです。キャンディ湖も人造湖です)

個人的にたいへん興味深かったのは、第8学年ではキャンディ王朝の視点から植民地化の歴史を、第9学年ではポルトガル・オランダ・イギリスの視点から植民地化を扱っていることです。

前者では、キャンディ王朝の内政の弱体化と、後々仇となる可能性をわかっていながら、助けを外国に求めるしかなかった外交の難しさがわかります。後者では、ポルトガル・オランダと比べたイギリスの戦略の計画性や精緻さ、すなわち統治者としていかに洗練されていたかを知りました。同時に、イギリスがスリランカの産業構造を変え、宗教観や民族観を刺激し、内戦や今のスリランカに至る難しい問題の種も蒔いていることがわかります。

なおこの教科書、イギリスから完全独立した少し後の1978年で記載が終わっています。内戦やその後の不安定な政治情勢に関しては、訳者の方が簡潔な説明を加えてくださっています。

かなり読み応えがあり、値段もしますが、スリランカの歴史にご興味のある方はぜひお手に取ってみてください。出てきた地名や場所をGoogleマップで調べると、今も遺跡として保存されていたりして、面白いです。

いかがでしたでしょうか。これからスリランカに行ってみたい、また行ってさらに知りたい、と思っている方に役立てば幸いです。ジャスミンツアーズでは、旅行に訪れるお客様が、その方らしくスリランカを理解し考察する機会を持てることをひとつの使命と考えています。お問い合わせをお待ちしています。

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